日本語は「膠着語」といって、助詞が文意を決める重要な働きをしています。いわゆる「て・に・を・は」です。アディムランドではリテラシーの将来に影響のある重要な課題なので早くからその課題に取り組んでいますが、理解に個人差が大きい分野ではあります。
ある子は幼いうちから助詞を正確に使いこなせるのに、別の子はさっぱり分からないなど、生得的な資質の大きさが感じられる領域ですが、さっぱり分からない子にこそ課題体験がものを言うのもこの課題ならです。使いこなせる子は放っておいてもいいほどなのに、こっちは課題を大いに楽しんでくれます。
アディムランドでは助詞を子どものために「くっつき」と命名しています。助詞は他の言葉にくっついて初めて用をなすからです。
「くっつき」がいかに大事かを、教材を参照しながら見ていきましょう。
4歳向けグレードにはどんな教材が?
例えば 4574 を取り上げてみましょう。
まず、相互に入れることのできる適度な大きさの箱と袋を用意します。
問題は次の5問です。
・はこに ふくろを いれなさい。
・はこを ふくろに いれなさい。
・ふくろに はこを いれなさい。
・はこに ふくろを いれなさい。
・ふくろを はこに いれなさい。
これを、実際にやってもらいます。4547 あたりの位置づけでは、助詞の意味が分かって正解する子、分かりかけている子、さっぱり分からない子など多様です。
行動が伴う課題なので、動きの中に気づきのヒントが隠れています。「に」は「のなかに」などと補助的な言葉を添えることで手掛かりが生じて分かり始めることもあります。
さっぱり分からない子も、何回か繰り返すうちにおぼろげに気づく場合もあります。なかなか気づいてくれない場合もありますが、そんなケースでもこの課題体験は無駄にはなりません。どの子も「クイズに正解したい」という思いは一緒だからです。そんな状態をうまく維持してあげるのが大人の役割といえましょう。
もうひとつ4歳向けの教材から 4784 を取り上げてみましょう。
問題は次の6問で、当てはまる図形へと線で結ぶクイズです。
・しかくが まるに はいっている
・しかくに まるが はいっている
・さんかくに しかくが はいっている
・さんかくが しかくに はいっている
・まるが さんかくに はいっている
・まるに さんかくが はいっている
この教材は先出の 4574 のバリエーションとも言えます。多少なりとも くっつき(助詞)が分かりかけた子どもが喜びます。
大人の会話では、助詞を省略してしまうことが少なくありませんが、子どもへ語りかける場合は、少ししつこいぐらいに強調する方が望ましいのかもしれません。
5歳向けグレードにはどんな教材が?
次に5歳向けのグレードから助詞関連の教材を拾ってみましょう。
5234 です。
設問は次の4こ。絵に合わせて_部に助詞を入れる課題です。
たろう_
はなこ_
たたいた。
たろう_
はなこ_
たたいた。
この文の_に 絵に合った助詞を入れるクイズです。
クイズは能動態構文と受動態構文とを対比させていますから、述部の「たたいた」と「たたかれた」がカギとなります。
ケンカは子どもの世界にはつきもの‥‥。「たたく」に対して「たたかれる」は子どもにはナラティブ(物語)としてリアリティのある受け身構文です。
いきなりでは、少々難しいことが多いのが実際で、苦も無く正答する子は限られてきます。
もう少し手掛かりのある助詞関連の教材を、5歳向けのグレードから拾ってみましょう。
5354 は、分け読み・助詞二択・助詞入れ の三部作です。ここでも助詞が主要なテーマです。
まず「わけ読み」。文を分かりやすく分析してみます。
授与構文なので述部の「あげました」がカギとなります。
5364 は、助詞の二択クイズです。
5394 は「ももたろう_ いぬ_ きびだんご_ あげました。」の文中に助詞を書き込むクイズです。
いずれも助詞に焦点を当てています。
これらを一挙にするか 間をあけてするかは 状況によります。一挙にすると前後のつながりで理解もつながります。間をおいて 5394 に正答するようならかなり分かってきたと言えましょう。
6歳向けグレードにはどんな教材が?
6歳向けグレードではどうでしょう。
6歳向けでも、先出の 5234 のバリエーションが再び、受け身構文に焦点を合わせて顔を出します。6074 がそれです。
6歳児向けの中で意外に難しいのが 6154 のクイズです。前掲の教材ではナラティブ(物語)がイラストで示されていましたが、それを自分で想像して、構文から推定しなくてはない難しさがあります。
ここで、6歳向けグレードの中で子どもがおしなべて喜ぶ教材を取り上げてみましょう。それは 6214 のセットです。
どんなクイズかを説明しましょう。
まずセットの初めはクイズの仕方を説明した、いわば指示書です。
次いで、「付)カード」を厚めの紙に印刷してカード状に切り取ります。
これは、このクイズで使うカードです。これだけで遊ぶこともできます。
カードの片面には、〈いつカード〉〈だれがカード〉〈どこでカード〉〈なにをカード〉〈どうしたカード〉と色分けで記されています。いわゆる5Wですが、いずれも日本語では「くっつき=助詞」がそれを明示しています。
この面を表にし、各色を集め、裏面にある言葉をつないで偶然に出来上がった文を味わいます。いずれも少なからずナンセンスなところがあるはずで、子どもたちにバカ受けすることでしょう。
次いで、最も面白げな組み合わせをあえて見つけさせ、「付)絵日記風用紙」に書き取ります。
6214 付)はそのための絵日記風の書き込み用紙です。
書くという作業で締めくくることが「書き言葉の世界」に子どもをいざないます。
この 6154 はもともと小学部の教材でしたが、偶然が生んだナンセンスな成り行きが子どもを動機づけるので、幼児用におだやかにアレンジして移植したものです(小学部の教材はもっとラジカルです)。
各グレードの検索欄に「助詞」と入れると関連教材が拾えます。
助詞は最初で最後の難題などとも言われますが、本サイトでは、幼児期にその子その子に応じた数多くのオリジナル教材を用意しています。無料ダウンロードでお子さんに合わせてご活用ください。
得意な分野を伸ばすのか、足らない分野を補うのかは教育の永遠の課題ですが、助詞の学習は将来のリテラシーを左右する能力なので充実した幼児期を送らせたいものです。